2023/03/31
キム ジヒョン(佐賀県)
日本は縮ませることにより美しさを見いだせる文化がある、というのはもうよく知られて いると思います。大自然を縮小した日本庭園や携帯用カセットプレーヤーのワークマンな ど、何かを小さくすることに哲学さえこもっているといわれる日本ですが、去年4月に初め て日本に来てあと少しで1年になる、私が感じた言わば「日本のミニチュア」について語らせていただきたいと思います。
上の写真は日本と韓国で普通に販売されているナッツです。一目で分かると思いますが、日本の方が小さいですね。しかし、韓国でも上のナッツは「小包装(소포장ソポジャン)」として売られている商品なのです。コンビニなどで売っている「一口」のサイズからも日本の方がコンパクトと言えます。
お菓子といえば「お土産」を欠かせませんね。日本のどこに行ってもその地域の特産品を利用したお土産を一個ずつ包装して販売していますが、韓国ではそういった「一個ずつの個装」のお土産はなかなかないような気がします。
高級な食事というと日本は懐石料理、韓国は韓定食をあげられるでしょう。一つ一つ丁寧に小鉢に入れてある膳立てが日本の「おもてなし」であれば、韓国の食卓は「盛りだくさん」そのものです。これは、ミニチュアだけでなく、パーソナルスペースを大事にする日本人と、一緒に食事をすることが好きな韓国人の特性も感じられる特徴ではないでしょうか。
また、この小鉢がお弁当の中に入るのも面白いです。韓国におけるお弁当のイメージは、携帯して簡単に食べられるものに限られていますが、日本では結構高級な料理にまで発達しているようです。蓋を開ける瞬間現れる繊細な構成は、日本ならではの縮みの美しさを味わえる絶品だと思います。
日本に来て驚いたもう一つは、軽自動車が多いことでした。韓国にも軽自動車がないわけではないですが、韓国で普通に「自動車」と言ったら「セダン」のことを思い出します。
まず、この軽自動車の規格から日本と韓国は異なります。日本の軽自動車は排気量660cc以下、長さ3.4m以下幅1.48m以下、高さ2.0m以下ですね。韓国は排気量1000cc以下、長さ3.6m以下幅1.6m以下、高さ2.0m以下の車が軽自動車として分類されます。そもそも規格からも日本の方が小さいです。
上の表は2021年度両国の車種別新車販売率です。道を歩いていたら軽自動車が多いなとは思いましたが、数字で見たら感覚以上に日本には軽自動車が多いですね。一般家庭で軽自動車を何台も持っていることからも(韓国は普通1世帯1台の車を持っています)、もしかしたら、日本人における自動車のイメージは、ただ移動の手段ではなく、「自分だけの空間」であることから、小さくても個人の車を持つという認識が表されているのではないでしょうか。
世界で一番短い文学、日本のミニチュア化の精髄といえば、個人的には「俳句」だと思います。
韓国の代表的な伝統詩は「時調(시조シゾ)」といい、45文字前後で詠まれます。俳句は詩調の1/4くらいの長さで、その中に季語も入れ、感情も入れ、背景に広がっている空間さえ想像させます。表現を極端に縮ませ、たった17文字を文学の領域まで発達させたのは正に日本のみの文化遺産でしょう。どちらの文学が優秀かを論じたいわけではございません。俳句はその短さだけで、長年にわたる日本のミニチュア文化を代表することができると思います。
初めのワークマンや庭園などが縮小により自分で所有するというのはもう有名な話です。
ただ、日本に来て感じたのは、生活の中にもお菓子やお弁当まで、「縮み」の意識があらゆるところで働いていることです。俳句のみならず雛人形など、伝統が今にも活発に継がれミニチュアの中に宇宙を詰め込むということ。生活の中に生き残っているミニチュアの意識は、短い1年の日本生活からも韓国とは違う「日本の不思議」として印象深く感じましたが、このコラムを読まれる皆さんはどう思われますか?
今回コラムについて色々と考えながら私からもいい勉強になりましたし、これからもこのような興味深い両国の違い、また共通点を通じていい交流になればと思いました。
ご拝読ありがとうございます。これからもよろしくお願いいたします!