国際交流員コラム

　今回のコラムは「韓服（ハンボック）」の歴史を知るシリーズとなっているのですが、いかがでしたか？以前の投稿から昔の韓服の形について知ることができたでしょうか。
　私はこれから皆さんにこのシリーズの最後になる「現代の韓服」について紹介したいと思います。

「改良韓服」と「生活韓服」

　高句麗の壁画で初めてその存在を現した韓服は、三国時代、高麗時代、朝鮮時代を経て現代に至るまであらゆる変化をしてきました。韓服とは文字通り韓民族が着る服という意味ですが、西洋から新文物が入ってきた19世紀末を前後して、韓国の服飾文化は「韓服」と「洋服」が混在し始めました。さらに韓国戦争と韓国社会の産業化により、伝統韓服は活動しやすい洋服に代替されてきました。洋服は韓国人の日常服としてすべての階層に自然に広がり、韓服は韓国的なアイデンティティーを表す通過儀礼や重要な儀式の礼服として着用され、高級化する傾向を帯びました。

　しかし、1980年代に入って生活水準が向上し、国際的な文化交流の増加につれ自国文化や韓国的アイデンティティーに対する関心も高まりました。1986年と1988年にはアジア大会とオリンピックを契機に韓服に対する新しい認識が生まれ、この時期に伝統韓服の形を単純化した「改良韓服」が誕生しました。

　そして韓国社会の国際化により、1990年代に韓国政府は「伝統文化復興運動」を展開しました。1996年には、文化体育部が制定した「韓服を着る日」を契機に韓服の「大衆化」と「高級化」という2つの話題が登場しました。その中で韓服の大衆化の側面で現代化された韓服が登場し、「改良韓服」という名前で数多くの衣類ブランドが出現しました。韓服を変化させる過程で、実用性の面では高い評価を受けた「改良韓服」ブランドも、伝統韓服の美しさの現代化という面では否定的な評価を受けました。

　したがって、「伝統韓服の美しさの現代化を目標に新しく拡散している変化を積極的に反映する新しいタイプの韓服」に対して、これを最も適切に指す新しい名称が要求されました。結果、「現代韓服」、「モダン韓服」、「実用韓服」、「日常韓服」、「生活韓服」などの名称が併用されますが、服飾専門家たちの議論を通じて「生活韓服」が最も適しているという結論に至りました。

　在来の韓服を再解釈したという点は同じですが、ただ実用性と活動性に重点を置いたのが改良韓服と呼ばれたとすれば、伝統性に基づいた美しさを追求しながらも現代人の日常生活に適合するよう簡素化されたのが生活韓服と呼ばれるようになったわけです。

変化する生活韓服

　在来の韓服の形は皆さんが以前のコラムでも見たように、身幅が広いです。それに女性の韓服はチマ（スカート）が長いため動きにくいという不便さがあったのですが、生活韓服はチマを短くし、活動性を上げました。伝統衣装でよく見受けられる「女性＝チマ」という固定概念を破り、チマだけでなく、女性向けの韓服バジ（ズボン）も次々と出ています。

　色も形も華麗すぎないのが韓服の特徴かつ魅力であって、地味にも見える男性韓服の方も、今は現代の感覚で解釈され、伝統文様を入れたり、ジーンズなどとマッチアップできるようにスタイリッシュに作られています。スーツに着眼して作られた韓服もあるので仕事着として着ることもできます。さらにBTSやBLACKPINKなどK-POPアイドルのミュージックビデオやパフォーマンスにも用いられるほど大衆化されています。

　生活韓服は昔の韓服に比べてスーツケースにも入るくらいコンパクトで軽くなっているため、旅行する時に着る人も時々見えます。また、マンツーマンタイプの韓服もあって運動する時も着ることができます。

生活韓服への批判の声‐伝統の継承か、文化の破壊か

　一方ではこのような韓服の変化に対し、批判の声も上がっています。伝統衣装と現代衣装との融合で実験的なデザインが多いし、簡素化し過ぎて韓服の形がほぼ残っていない場合もあるため「これは韓服とは言えない」「文化の破壊だ」というのが彼らの主張です。

　しかし、歴史を見ても韓服は様々な形で存在し、変化してきました。今、韓服と呼ばれているものも朝鮮後期の韓服の形をしているため、韓服を着始めた昔のままのとは言えません。むしろ、どの時代の韓服が伝統韓服と言えるのか？という疑問が沸きます。生活様式が変わることに伴って服飾が変わるのも当然です。むしろ現代衣装との融合で韓服が海外に広く知られるきっかけになることもあります。今まで韓服に対し「不便だ」と認識していた若者たちも、生活韓服が登場してからは韓服への関心を示しています。韓服が持つ伝統性を失わない程度での適切な現代化は必要なものではないかと思います。

　ここに正解はないですが、「原型」にこだわり過ぎず、時には時代の流れに合わせるのもいいかもしれません。未来の韓服はどんな形にまた変化していくのか楽しみですね。