2024/10/04
ソン・ハンビッ(山口県)
アンニョンハセヨ!山口県の国際交流員、ソン・ハンビッと申します。
佐賀県のキム交流員に続いて、今回は私がふるさとの昌原特例市(チャンウォン市)を紹介します。ソウル圏に続いて、韓国の南の都市の魅力を感じてください!
現在の昌原特例市は韓国南部の慶尚南道に位置した、旧昌原(チャンウォン)市、旧馬山(マサン)市、旧鎮海(チネ)市が2010年3月2日に、併合して誕生した比較的新しい都市です。併合後の面積は749.23㎢です。
三つの市が併合した都市であるため、人口100万を超える大きい地方自治体です。韓国では人口100万を超える一般市は、日本の政令指定都市のように、特例市に指定されます。特例市は韓国全体で4市しかありません。(2024年現在)
昌原市は、山口市と姉妹提携を行っており(2009年11月16日から)、昌原特例市が位置する慶尚南道は、山口県と姉妹提携を行っております。今年で姉妹提携15周年を迎え、様々な交流が行われております。
このコラムでは旧行政名に沿って、昌原エリア、馬山エリア、鎮海エリアに分けて皆さんに紹介します!
昌原特例市に人々が住み始めたのは青銅器時代からと推測されます。過去の海岸線に沿って貝塚、住居遺跡などが発掘され、骨浦、彌烏邪馬などと呼ばれた古代国家の痕跡とされています。
以後、伽倻(カヤ)地方の一部になり海外と盛んに交流し、伽耶滅亡後は新羅に編入されました。高麗・朝鮮時代では、国境の町として海軍が駐屯し、港町として、漁業・商業・海運の中心地として栄えました。今でも、近代に栄えた魚市場が、観光名所として残っております。
海岸に面していると同時に内陸盆地の特性が現れまして、夏場は暑くて降水量が多いですが、冬場は温かくて雪があまり降りません。工業が栄えている一方、農業も有名で、自然も豊かです。チュナム貯水池、マグンサン温泉、干潟などの多くの自然資源があります。
特に市の真ん中の昌原エリアには、おおよそ46万人が居住しております。様々な商業、娯楽、行政施設があり、「国際住みよいまちづくり賞」(LivCom Awards)で銀賞を受賞したこともあります。中でも、アジア最大の大きさの昌原広場の近くには官公署、金融機関、百貨店、大型マート、アーケード、伝統市場が集まっていて、昌原特例市の代表的なランドマークです。
チュナム貯水池は、もともと農地に農業用水を供給する目的で作られた貯水池で、サッカー場1,400個が入る、韓国最大規模の内陸湿地です。1980年代から大規模な渡り鳥が毎年観察され、今はラムサール条約に登録されており、とても重要な自然遺産です。
都市の中の小さなお寺ですが、ここにある大日如来(韓国では毘盧遮那佛と呼ぶ)の石仏像は9世紀新羅時代のもので、世界的にも珍しい、1000年以上前の仏像です。昌原市最初の韓国の宝物(国家文化財)でもあります。
馬山(マサン)エリアは、旧馬山市の地域で、近代の経済・政治的中心地です。栄えた時代から歴史文化遺産もたくさんあり、馬山の人々は故郷にとても誇りを持っています。地方の特色が強いため、今でも故郷を紹介する時、「昌原の者」と言わずに「馬山の者」と、言う人もいます。
馬山は、鎖国政策をとっていた近代韓国(朝鮮)の開港地の一つで、各国の機関、商社、支店などが位置する近現代の経済的拠点の一つでした。韓国政府が成立した後、独裁政権が権力を握った時は、馬山の市民たちが一番最初に政権に立ち向かい、民主化運動を行いました。当時の人々が不正に抗った跡が街の様々なところに残って、市からも「民主聖地・馬山(昌原)」というスローガンを使っています。その後、韓国の経済が急速に発展する時期には、計画都市化が進み、経済自由区域と工業団地が立地し、韓国の経済発展の中心地の一つになりました。
今でも活気溢れるこの都市は、歴史遺産を守りながら、一方で新たな生活の場が生まれ続ける、ダイナミックな町です。美味しい海鮮を味わうことも、芸術と歴史を堪能することもできます。また、水がおいしいということで、お酒・醤油も昔から有名です。
馬山エリアにあるNCパークは、韓国のプロ野球チーム「NCダイノス」の本拠地です。韓国ではプロ野球はとても人気の高いスポーツで、特に釜山(プサン)と馬山は野球愛が高いと言われてます。持ち込みもOKで、特に、サムギョプサルを楽しみながら野球を見れる「焼肉席」は日本では絶対経験できないものです。
過去、「慶尚南道の明洞(ミョンドン)」と呼ばれたチャンドンは、70~80年代に特に栄えたレトロな街です。コロナ禍で閑散とする時期もありましたが、若手アーティストに空き店舗を無償で提供し、彼らの活動と地元の努力で、活気を取り戻しております。
近現代から韓半島(朝鮮半島)海軍の中枢部であった「鎮海(チネ)エリア」は、その名前通り、穏やかで美しい海で有名です。また、韓国内でも最も桜が美しい街と言われて、桜祭りの時期には国内外から数百万人が集まります。
前述のとおり、昌原特例市地域は太古から日本と様々な交流を行ってまいりました。その中で、鎮海は日本の重要な拠点とされた時もあって、食堂から駅舎まで、様々な日本風建物が残っています。韓国国内に現存する一番古い近代式郵便局などがあり、築100年を超える歴史深い建物が多くあります。
国も、昌原特例市も、このような貴重な近現代の建築文化財を守り、新たに博物館、交流の場、学びの場として活用しております。
昌原特例市は、韓国の「慶尚南道」に位置しております。慶尚南道は、韓国の南東部に位置する、韓国の「道」(日本の県)の一つです。8市と10郡で構成されていて、京畿道、ソウル、釜山に続いて、韓国で4番目に人口が多いです。1987年から山口県と姉妹提携を結んでいて、交流を重ねています。
1983年、山口県と慶尚南道で、地方自治体レベルの漁業・水産関係の交流が始まり、1987年6月、山口県と慶尚南道の姉妹提携の調印が実現されました。2022年には、山口県-慶尚南道の姉妹提携35周年を記念して、東京にある山口県のアンテナショップで慶尚南道の特産品を展示しました。コロナ禍による移動制限が緩和されていることから、観光・文化・教育交流などが活発になりつつあります。2027年には交流40周年という節目を迎えます。