長崎県では、2013年度から「日韓両国の若者が、お互いの国についての理解を深めるとともに、日韓交流の方策について討議し、企画・立案することを通じて、今後の長崎県と韓国の交流を担う青少年を育成し、今後の交流の促進につなげること」を目的として、『日韓未来塾』を実施しています。
今回のトピックでは、2017年8月18日から8月25日の8日間にわたって、韓国ソウル特別市、釜山広域市、長崎県対馬市及び長崎市にて開催した『日韓未来塾2017』の様子をご紹介します。
特に今回は、例年よりもさらに朝鮮通信使に焦点を当てた内容で、塾を開催しました。
今回の塾では、日本側参加者が、韓国についての知識を深めた上で、韓国側参加者との交流に臨んでいただくとの趣旨の下、1日目及び2日目の行程を日本側参加者のみでの行程としました。
1日目の行程は、まず、長崎空港からエアソウル(長崎~ソウル便)に搭乗し韓国仁川空港に移動しました。仁川空港からの移動等が予定より順調に進んだため、『大韓民国歴史博物館』の視察を急きょ追加してのスタートとなりました。
その後、長崎県ソウル事務所の鈴木所長からの韓国の概要・文化・習慣、エアソウルの運航、長崎県ソウル事務所の取組等についての講義、長崎県から一般財団法人自治体国際化協会(クレア)ソウル事務所に派遣されている荒木所長補佐から同事務所の取組に関する紹介と続きました。参加者の皆さんは、熱心にメモを取りながら、質問をしていました。
朝鮮時代の正宮の景福宮と国立古宮博物館を解説士の説明を聞きながら視察した後、ソウル産業振興院の林在奎(イム・ジェギュ)マネージャーからの『韓国の首都ソウル特別市の在住外国人及び外国籍企業に対する支援政策』をテーマとした講義を聴講しました。参加者の中には、初めて海外や韓国を訪問する参加者が多かったため、ソウルでの行程は、視野を広げるよい機会となったようです。
講義終了後は、韓国の高速鉄道KTXに乗り、ソウル特別市から長崎県の友好交流都市である釜山広域市に移動しました。
ソウルの外国人等支援政策に関する講義
いよいよ日本側参加者と韓国側参加者とが合流しての開講式です。開講式での自己紹介等を終えた後は、最初のグループ討議『日韓の文化・習慣等の違いや共通点』を行いました。各グループとも最初の討議から活発に意見を交換していました。
その後、釜山博物館で朝鮮通信使に関する展示等を視察し、続いて、国立釜山大学人文学部国語国文学科の韓泰文(ハン・テムン)教授からの『朝鮮通信使に関する資料のユネスコ世界の記憶への登録申請の意義』をテーマとした講義を聴講しました。
講義では、韓泰文教授から参加者に対して、朝鮮通信使に関するいくつかの質問が投げかけられましたが、正解者には朝鮮通信使の資料等のサプライズ・プレゼントがありました。
午前中は、まず、釜山グローバルビレッジで釜山広域市の英語教育に関する取組について学び、続いて、国立釜慶(プギョン)大学人文社会科学部史学科の朴花珍(パク・ファジン)教授からの『釜山に関する特別講義』を聴講しました。
お昼は、同大学での学食体験を行い、甘川(カムチョン)文化村へ移動し、韓国伝統衣装である韓服(ハンボク)体験と甘川文化村の視察を行いました。
甘川文化村の視察では、解説士の方に同村の歴史などについて、説明いただきましたが、参加者の皆さんは熱心に説明を聞いていました。この日は、朝から高速船で釜山広域市から長崎県の対馬市(厳原)へ移動しました。
対馬に到着すると、まず、写真家で元長崎県対馬支庁長の仁位 孝雄(にい たかお)先生の『対馬に関する特別講義』を聴講し、続いて、第2回目のグループ討議『私たちが考える日韓交流の方策』を行いました。
そして、今回初めての企画として、日韓未来塾のOBと参加塾生との交流を深めてもらうとともに、参加塾生の将来の参考にしてもらうため『日韓未来塾OBからの講話と交流会』を行いました。講師には、対馬市役所の大澤 信 様をはじめ、長崎県国際交流協会の桃田 佳 さん、特別講師として、初回の日韓未来塾からほぼ毎回塾に同行いただいている韓国人ブロガーの金智演(キム・ジヨン)さん、呉和詠(オ・ファヨン)さんほかをお招きし、これまでの日韓交流に関する取組や参加塾生に求めることなどについてお話いただきました。
参加者の皆さんは、講師や特別講師の実体験に基づく話を興味津々の表情で耳を傾けていました。
朝から、『対馬観光ガイドの会やんこも』の小島武博会長(朝鮮通信使対馬顕彰事業会会長)と藤井敦子さんのご案内で、対馬の歴史・文化視察を行いました。
その後、対馬市役所を会場に、第3回目のグループ討議を『朝鮮通信使を活用した日韓交流の企画案』をテーマに行いました。また今回は、企画案を策定する前提条件として、公益財団法人長崎県国際交流協会が実施している国際交流応援プロジェクト(各種助成事業)を活用することを条件としました。
各グループの企画案の発表では、『日韓高校生等を対象とした対馬~釜山≪朝鮮通信使ゆかりの地≫視察・体験セミナー』、『未来を描く朝鮮通信使(日韓の若者による絵巻作成ほか)』、『長崎県内の日本人大学生と韓国人留学生による対馬でのホームステイ~対馬厳原港まつりでの朝鮮通信使行列体験~』、『日韓の若者による朝鮮通信使の道をたどる事業』、『日韓の音楽を通じた交流事業≪朝鮮通信使になろうぜ!≫』など、さまざまなアイデアが出されました。
グループ発表等を終えた後は、対馬空港から空の便で長崎へ移動しました。
7日目は、終日、長崎県の大学生と中国(福建省、上海市、湖北省)の大学生との交流事業である日中「孫文・梅屋庄吉」塾2017の参加者と合同で、『日中韓トライアングル交流会2017』を実施しました。
初対面のメンバーで、グループ討議『日中韓の未来~あるべき姿と方策~』を行いましたが、各グループとも日中韓での討議の難しさを感じながらも、活発に議論していました。
グループ発表まで終えた後は、出島和蘭商館跡を訪ね、全員で着物に着替えて出島を視察しました。
うす曇の天候ではありましたが、朝からグラバー園を視察した後、『日韓未来塾2017』の閉講式を執り行いました。
今回の日韓未来塾は、史上最長の日程となったこともあってか、閉講式終了後の日韓のお別れの際には、涙のお別れが多く見られました。参加塾生からあった「今回限りの交流で終わるのではなく、今後も交流をずっと続けていきたい。」という言葉のとおり、今回参加した長崎県と韓国の参加塾生の皆さんの交流がよりよい形で続いていくよう願っております。
今回の『日韓未来塾2017』は、日本側参加者の韓国ソウル特別市における行程を新たに追加し、2017年秋の「朝鮮通信使関連資料のユネスコ『世界の記憶』への登録(2017年10月登録決定)」を見据えて、前述のとおり例年にも増して『朝鮮通信使』に焦点を当てた内容で塾を開催しました。
また、長崎県国際交流協会の国際交流応援プロジェクト(各種助成事業)を活用した『朝鮮通信使を活用した日韓交流の企画案』を立案することを通じて、実際に自分たちが交流を行うことを前提としたグループ討議となったため、企画案も一歩前進したように感じました。
日韓の間には、依然としていくつかの課題もありますが、この日韓未来塾に参加した塾生の皆さんが、将来日韓、そして、長崎県と韓国との交流の懸け橋となって活躍されることを期待しています。
日本側参加者 |
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韓国側参加者 |
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実 施 | 主催/長崎県、共催/対馬市、後援/朝鮮通信使対馬顕彰事業会、釜山広域市、財団法人釜山広域市国際交流財団 |
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日 程 | 2017年8月18日(金)~8月25日(金)〔7泊8日〕 ※韓国側参加者は8月20日(日)から参加 |
場 所 | 韓国ソウル特別市、釜山広域市、長崎県対馬市及び長崎市 |
参加者 | 40名(日韓の大学生:各20名) |
内 容 |
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